色とりどり【株式会社エクシオジャパン】

相鉄線のさがみ野駅を最寄りにして、住宅街の中の坂道の途中に、住宅型有料老人ホーム「ムート座間くりはら」はあります。

施設に伺ったお昼過ぎ頃は、ちょうどデイサービスフロアーでご利用者さんが体操をしている時間でした。職員さんの声かけと音楽に合わせ、筒を持ち上げたり、回したり、少し難しそうな運動です。

ご利用者さんの前に立ち、見本を見せながら、声かけを行っているサブリーダーの星さん。一見、レクリエーションなどが得意そうに見える彼女ですが、「実は、私はレクリエーションがあまり得意ではないのですが、アイデアをたくさん持っている職員さんがいるので一緒にやってもらっています」と話します。

彼女はアルバイトをいくつか続けたあと、フルタイムで就職しようと思い立ち、学生時代に取得していた介護職員初任者研修の資格を活かして介護の仕事に就いたそう。幼いころから祖父母と同居していたこともあり、介護の仕事は身近に感じたと言います。

「きっかけは、本当にたまたま資格を持っていたからでしたが、働いてみると楽しかったですし、今ではやりがいも感じています」

終始控え目な話し方だった彼女から発せられた、「やりがい」という言葉に込められていた力強さに、彼女の本心が少し垣間見えた気がしました。

住宅型有料老人ホーム「ムート座間くりはら」は、施設内にデイサービス、訪問介護事業所が併設されています。

職員さんは、それぞれのサービスの仕事を兼務しながら働いています。少し分かりづらいと思うので、職員さんの働き方を詳しく説明すると、住宅型有料老人ホームで暮らすご利用者さんがデイサービスを利用する時間は、デイサービスの職員として働き、訪問介護を利用する時間はヘルパー（訪問介護員）として働くということです。

デイサービスと言っても、利用するのは施設内のご利用者さんだけですので車での送迎もありません。訪問介護と言っても、町中に点在するご利用者さんのお宅を訪問するのではなく、施設内のご利用者さんのお部屋を訪問するため、職員さんの移動という面では負担感が少ない働き方ですね。

住宅型有料老人ホームで働く中で、デイサービスや訪問介護、入居施設といった異なる働き方を一度に体験できることは大きなメリットになると思います。

通常の働き方では、それぞれが単独の介護事業所になってしまうため、どれかひとつの仕事しか覚えることができませんが、「デイサービスで働き始めたけれど、働き方が自分には合っていなかった…」なんてことがあった時にも、転職を考えるのではなく異動を申し出ることで解決することができるはずです。

また、初めての介護の仕事を探す際に、どのサービスで勤めたいか選びかねている場合も、どれかひとつに無理に絞る必要がないので選びやすいと思います。いわば、働き方に保険をかけるということですね。

同社の施設であっても、前述したように兼務で働ける施設もあれば、ある程度デイサービス担当、訪問介護担当と分かれて働いている施設もありますので、希望があれば見学や面接の際に尋ねてみてください。

続いて、グループホーム「アクア東林グループホーム」に伺いました。こちらは小田急線東林間駅から徒歩10分ほど。ピンクの屋根の建物で、こちらも住宅街の中にあります。

井海田（いかいだ）さんは、大学卒業後、株式会社エクシオジャパンに入社し、今年で2年目。入社時研修での体験勤務で、少ない人数のご利用者さんと深いかかわりができるというグループホームでの働き方に惹かれて配属を希望したと振り返ります。

株式会社エクシオジャパンでは、新卒入社の正社員を対象とした新入社員研修において、1か月目に社会人としての基礎研修、2か月目に介護職の基礎研修を座学と実技で行い、3か月目にグループホームや有料老人ホーム、訪問介護、デイサービスといったサービスごとの研修が行なわれます。それらの研修終了後、本人の希望と適性を見極めた上での配属となります。

中途入社の場合は、入社日初日に本社にて、「入社時研修」を受けていただきます。入社の手続きはもちろん、雇用形態別に策定された就業規則の内容なども丁寧にお話し、エクシオジャパンのルールなどを知っていただく時間があります。

本社に来ていただくことで、エクシオジャパンの全体概要を知っていただく目的もあるようです。また、入社時研修では無資格未経験の方を対象とした実技研修も用意されています。ブランクがあったり経験が浅いなどの理由で受講希望の方がいれば随時対応もしている研修で、施設勤務の前に介護技術のおさらいができます。

20代の井海田さんからすると、一緒に働いている職員は皆さん年上で、彼女のご両親や祖父母ともいえる年齢の方々です。ご利用者さんにいたっては曾祖父母ほど年齢の離れた方もいます。そのような環境のなかで働くことに不安はないのか？率直な質問を投げかけてみました。

「年齢が離れているからこそ、皆さんの話が新鮮に聞こえます。この間も、職員さんが黒豆を煮てきたと昼食時にふるまってくれ、とっても美味しくて驚きました。実は私はあまり煮豆が好きではなかったのですが、いただいた煮豆はふっくらしていて美味しく、煮豆は全部この味なら良いのにと思ったほどです」と笑いを交えながら、素直な感想を聞かせてくれました。

最近考えている働き方についても、こう話してくれました。

「以前までは、仕事をすべて職員だけで行おうとしていました。しかし、すべてではなく、ご利用者さんができることは積極的にお願いして、手伝ってもらおうと最近は考えています。年上の方であるとか、認知症のある方だからと決めつけずに、できることは手伝ってもらうことが、その方にとってのやりがいや楽しみにつながると気づいたからです」

ご利用者さんや職員などの年齢や肩書きにとらわれ過ぎず、フラットに考える姿勢が、楽しく働く秘訣なのではと彼女の話を聞いて感じました。

井海田さんの同僚の八百屋さんは湘南ケアカレッジの初任者研修卒業生で、勤務して2年ほど経ちます。

「入社後の研修を受けた中で、認知症の方への対応が一番印象に残りました。そして、認知症が一番難しそうな分野だったので、まずは難しいことから取り組んでみようと思い、認知症の方ばかりが暮らすグループホームでの勤務を希望しました」と語った彼女は、希望通り働き始めた現場でのできごとを続けて話します。

「認知症といっても、本当にさまざまな症状の方がいます。ティッシュペーパーやハンドタオルなどの紙を収集して何かを書いて配る方、不穏な気持ちが強くなりヒステリックになってしまう方。まずは声かけをして、時間が許せば話を聞いて、その方の見えている状況を知ろうとしたり、話題を切り替えてみたり、その時々で対応しています」と現場で認知症のある方と対峙する介護職員であれば、あるあると頷くようなシチュエーションを教えてくれました。

「そういう時って大変ではないですか？」と少し意地悪な質問をする私に対し、「大変なのは、ご利用者さんも同じですね。あとは研修で『認知症の方の行動には必ず理由がある』と教わったのも大きいです。何か理由があると思うと、できることならご利用者さんが穏やかに過ごせるようにしたいと思えます」

「とはいえ、右往左往しながらです」と付け加えられた言葉から、彼女がとても真摯にご利用者さんと向き合っていることが伝わってきました。理由なんてないと決めつけてしまえば楽ですが、それでは問題に蓋をしているだけであって、介護とは言えません。

たとえ理由が分からなくても、ご利用者さんも職員も大変ではあるけれど、その理由を探すやりとりの中でお互いの気持ちが変わっていったりすることもあるはずです。結果よりも過程が大事という言葉もありますが、もしかすると、理由が見つかることよりも、理由を探すやりとりの方が重要なのかもしれません。

株式会社エクシオジャパンでは、これまで施設長に一任されてきた採用活動を、本社が窓口になる方針に切り替え、離職率が徐々に減少傾向にあります。各施設で行われる面接の際も、採用担当の松原さんが同席し、施設長と一緒に複数人で行う面接に変更し、ミスマッチを防いでいるのだそう。

エクシオジャパンで働く際のメリットにいついて、採用担当者ならではの視点で、松原さんはこう話します。

「エクシオジャパンではデイサービス、住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、グループホームとさまざまな形態の事業所があります。そのため、たとえば、もっと技術を磨きたいといったスキルアップを考えた転職の際に、会社を退職するのではなく、異動という選択ができます。履歴書に退職と書く欄をひとつ増やさなくて良いというのは大きいと思います」

たとえば、デイサービスで始めた介護の仕事のなかで、少しずつ自信がついてきて、デイサービスに通うご利用者さんではあまり使わない移乗介護の技術を磨きたいと思ったとき、転職するしかないというのではなく、馴染みのある会社でまた違った事業所を選べるのであれば、それ以上のことはないと思います。

「面接に来てくださる方を見ていると、性格は十人十色、得意や不得意ももちろんあると思います。介護観もそれぞれあるでしょう。その中で大事なのは、自分や自分の家族が受けたいと思う介護を提供してくれる方であることです。そのような思いやりのある方が集まったら、おのずと良い施設になっていくと思うのです」

松原さんが最後に話していた採用の際に大事にしていることは、とても深く納得でき、その通りだと私も思いました。介護の方向さえそろっていれば、あとは職員さんそれぞれの働きによって、良い施設はできあがっていくのです。

ちょうど施設の入り口で私を出迎えてくれた色とりどりの貼り絵のように、個性もさまざまな職員さんたちによって、素敵な絵ができあがっていくはずです。

フランクに話ができ、職員同士の仲がよい

職員さんが自宅で作ってきてくれた料理をおすそ分けしてもらったり、フランクに話ができ、職員同士の仲がよいのがいいと思います。私はまだ介護士としての経験も浅いので、技術をしっかりとしたものにしていくのが目標です。

アクア東林グループホーム

介護スタッフ　井海田さん

採用担当からひと言

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