「また明日」と手を振る人たちに見送られ、エンジンをかけて動き始めたバンは、大通りへと走り出します。
社会福祉法人白峰福祉会サポートセンター町田ともは、障害のある方が仲間たちと仕事をし、または余暇の時間を過ごす生活介護事業所です。ドライバーさんは、朝ひとりでの通所が難しいご利用者さんを、自宅やグループホームまで送迎車でお迎えに行きます。そして活動後の夕方は、それぞれの帰りを待つ人の元へと彼らを安全に送り届けます。
直接ご利用者さんの支援にあたる仕事以外にも、彼らの支援につながる関わり方はいろいろとあるのです。
社会福祉法人白峰福祉会は、町田市内にサポートセンター町田とも以外にも町田かたつむりの家、町田生活実習所など、複数の生活介護事業所を運営しています。
根岸にあるサポートセンター町田ともは、アメリアショッピングセンターが近くにある、2013年に開所した比較的新しい事業所です。
送迎車などの車両管理をしている渋谷さんは、前職は車販売の営業マンとして働き、まったく福祉とは異なる畑にいたのだそう。
「きっかけは、息子の将来を考えたことでした。障害がある息子が義務教育を卒業したその先を考えたら、お世話になるかもしれない制度や事業所について何も知らないままではいけないと思って、前職を退職し、障害福祉の仕事を探し始めました」
「ところが、障害支援に関して知識も資格もなかったことで、2か所採用を断られてしまいました。冷たいものだなぁと落ち込んでいたところ、白峰福祉会にたどり着きました。そこで理事長の森さんと話した時に、『白峰福祉会で働きたいのなら、資格は関係ないよ。それから、たとえ渋谷さんがうちで働いていなくても、この町田で暮らす息子さんとその家族を私は支援するよ』とおっしゃってくれたことが、本当に嬉しかったです。それを聞いて、ここで何か手伝わせてもらいたいと思い、『働かせてください』と願い出ました」
サポートセンター町田ともで支援員を始めた渋谷さんは、その後、送迎車のドライバーも務め、元々持っている車に関する知識を活かして、今はご利用者さんが乗る送迎車の管理やドライバーさんの採用から教育まで担当しています。
「車に関してはお任せください」と頼れる笑顔で答える渋谷さんからは、自分の持つ知識や経験が求められ、ご利用者さんを息子さんに重ねつつ、白峰福祉会に貢献できることを喜んでいるのがとてもよく伝わってきました。
ドライバーと聞くと、男性を想像しがちですが、白峰福祉会で働くドライバーは女性も多いのだとか。左に映る女性もそのひとり。
女性であっても、自家用車で7人乗りのミニバンを運転した経験があれば、(同じサイズの送迎車を運転するので)そのままスムーズにドライバー業務に就くことができますし、車の運転が好きであればなお良し。
これだけは譲れないと渋谷さんの直訴が通り、ほぼ全車にバックアイカメラが搭載されたことで、カメラと目視の両方で後方確認でき、より安心・安全になっています。
バンタイプの送迎車には、6人ほどのご利用者さんに支援員さんが添乗し、朝夕それぞれ決まったルートを走り、家々を回ります。
「運転は慎重で丁寧であれば、上手ではなくても良いです」と渋谷さんは言います。
「求めているのは、気遣いのあるドライバーです。たとえば、信号機のない横断歩道で待っている歩行者に気付いたら、停車し、歩行者を優先して渡ってもらえるようにする。運転をする人だったら分かると思うのですが、ここで止まったら後ろの車からクラクションを鳴らされてしまうのではないかと不安に思い、止まりたくても止まれないことがあると思うのです。このような場面では、道路交通法上は止まらなければならないのですが、実際のところ多くのドライバーが実施できていないのではないでしょうか。もちろん運転だけをしていたら良いのではなく、自宅やグループホームで出迎えてくれる家族や支援員さんにきちんと挨拶をすることも当たり前だと思っています」
今日も白峰福祉会と印字された送迎車が町田を走っています。送迎車はいわば白峰福祉会の走る広告塔なのです。マナーを守る、善きドライバーを体現することで、それはそのまま白峰福祉会で働く人たちの印象につながってゆくはずです。
白峰福祉会でのもう1つの働き方に、ライフサポートはくほうにおける移動支援のヘルパーがあります。移動支援とは、知的に障害のある人が趣味や余暇を楽しむための外出をサポートする仕事です。
もちろん、安全な移動に際した知識や技術は必要ですが、知的に障害のあるご利用者さんにとって必要なのは、彼ら彼女たちが自ら判断をするための支援だと理事長の森さんは語ります。
社会のなかでは、理屈や意味としてではなく、経験で身につけていくソーシャルスキルを元にする判断が数多くあります。
たとえば、エスカレーターは左側に停止しながら乗り、右側は歩く人のために空けておくこと。横断歩道に設置されている信号機は、どれだけ待っていても自動的に青にならない「押しボタン式」の信号機があることなど。
世の中は、AならばBと決まっていないことに溢れています。そのような明文化されていないルールに従えるのは、その場面をどう乗り切ればよいのかを知っている経験があるからです。
ヘルパーは、ご利用者さんの判断を助ける働きをしつつ、外出先で起こる出来事に対してご利用者さんに代わって対応したり、適切な助け舟を出すなどして支援をします。ヘルパーと二人三脚でさまざまな経験を楽しく重ねていくことで、経験値が蓄えられていき、それが彼ら彼女らの自信につながっていくのでしょう。
外出先は、事前にご利用者さんや家族と事業所が相談の上、決定します。
平日の夕方であれば、サポートセンター町田とものような日中活動場所にヘルパーが迎えに行き、それからカラオケに行ったり、夕食を食べに行ったり、プールで汗を流したりして3時間ほど過ごしてから、再びご利用者さんの自宅へと送り届けます。
休日は、昭和記念公園や映画館、動物園など遠方に出かけます。
ヘルパーさんは前もって勤務可能日を事業所に伝え、それをもとにしてサービス提供責任者がヘルパーさんとご利用者さんのマッチングを行い、その後、移動支援の行程や注意すべきことなどの情報がヘルパーさんに届けられます。
「どのヘルパーさんにどのご利用者さんの支援をお願いするかは、総合的に考えています。『長く良い関係が築ける組み合わせかどうか』という点に重点を置きつつ、相性の良さや関係性の深さ、高齢のヘルパーさんに(たとえば山登りなどの)プログラム内容の負担が大きすぎないものか、初めてヘルパーをするご利用者さんであれば同行可能な職員が他にいるのかなど、あらゆる項目を見ています」
ライフサポートはくほうでは、ヘルパーさんにとって初対面のご利用者さんであれば、必ず馴染みある先輩ヘルパーが同行し、支援方法などを支援中のその場で伝えていきます。
ご利用者さんがこの表情をしている時がトイレに行きたいサインといった情報や手を出す間合いなど、言葉だけではニュアンスが伝わりにくいことも、目の前の状況をもとに伝えればより分かりやすく理解できるでしょう。
同じヘルパーと外出する回数を重ねることで、ご利用者さんも次第にリラックスしながら外出を楽しめるようになります。ヘルパーさんからも「この方はイルミネーションが好きだから、次の移動支援は新百合ヶ丘駅でどうでしょうか」とご利用者さんの好みを反映したプランを、阿部さんに提案してくれるようになるなどしてよい変化が生まれていきます。
ゆっくりと変化していく関係だからこそ、長く良い関係が築けるかどうかという視点は、大事なポイントなのです。
「移動支援は基本的には1対1の仕事ですので、ヘルパーさんにとって不安がないようにサポートしています。もちろん移動支援の仕事自体が初めてという方には、1対1ではなく、多対多の集団の移動支援から仕事を始めてもらうことで、常に他の先輩ヘルパーが手を貸せる状況をつくっています。他のヘルパーさんの支援風景を見ることで、学べることも多くあると思います」と阿部さんは続けます。
何と言っても移動支援におけるヘルパーのやりがいは、自分自身の世界が広がってゆくことにあると私は思っています。ご利用者さんが電車の中で独特な角度で窓の外をのぞき込むとき、そこに目線を合わせてみるだけでも、そこにはこれまで私が知らなかった景色が広がっています。
彼らの楽しみ方や喜びを、ともに笑い過ごすことで分けてもらうことができ、私自身の人生も豊かなものになっていると感じるのです。
「ヘルパーさんが書いてくれる実績表という記録用紙を通して、移動支援中にしか見せない様子を知ったり、後日、事業所でご利用者さんと顔を合わせた時、『この前は、ここにヘルパーさんと一緒に行って楽しかったよ』と嬉しそうに話しているのを聞くと、ほっと安心するのと同時に、『よっしゃ!』とガッツポーズをしたくなります」
とマッチングをしたサービス提供責任者の阿部さんは言います。
ただ機械的に組み合わせを決めるのではなく、ご利用者さんにとってもヘルパーにとっても良い関係が築けるようにと願いながら送り出すからこそ、「また行きたいな」と互いに思ってくれることが、嬉しくてしかたないのです。
「ご利用者さんがこの町で暮らす上で、長く助けになれる人でありたい」
インタビューの最後に、これまでおっとりと話していた阿部さんが一番自信を持って語ってくれた言葉に、彼女の中にある強い芯を見た気がしました。
送迎車を運転するドライバーも、移動支援のヘルパーも、町田や近隣の地域に住んでいる人ばかりです。そしてもちろん、ご利用者さんもそのご家族もこの町の住人です。
優しい運転に代表されるようなマナーの良い町であれば、誰にとっても住みやすいでしょう。「今度は、ここへ一緒に出かけたいな」と思える魅力的なヘルパーやご利用者さんが多ければ、長く住み続けたいと思える町になるでしょう。社会福祉法人白峰福祉会はそのように、町田で暮らす人々を支援しているのです。
働く人の声
今日も1日楽しく過ごしてもらえた
朝、送迎車でご利用者さんをお迎えに行くと、待ってましたとばかりに元気に出てきてくれたり、夕方また見送るときには「またね」とハイタッチをして、玄関から入っていく姿を見届けると、今日も1日楽しく過ごしてもらえたのだなと嬉しくなります。
法人本部車両管理 支援スタッフ
渋谷さん
長く助けになりたい
ライフサポートはくほうにてご利用者さんやご家族とかかわる中で、地域で長く暮らしていくなかで様々起こる変化の際にも、長く助けになりたいと思っています。ヘルパーとしてご利用者さんの移動支援に関わる際、喜んでいる姿を見て、私も、「来れてよかった」という気持ちになります。
ライフサポートはくほう サービス提供責任者 阿部さん
一緒になって喜べる
ご利用者さんと過ごす中で、何かできるようになった時に一緒になって喜べるのがこの仕事の良さだと思います。同期や先輩職員の仲も良いので働きやすいです。今後は、今よりもっとご利用者さんの変化に気づける支援員になっていきたいです。
サポートセンター町田とも 支援スタッフ 田村さん
【パート】 社会福祉法人白峰福祉会 生活介護施設送迎(ドライバー)
時給例 1,100円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【時給給1,020円、処遇改善手当80円】 賞与:合計1カ月・年2回支給
1,120円~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【時給給1,040円、処遇改善手当80円】 賞与:合計1カ月・年2回支給
待遇 ・交通費支給(実費) ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金) ※勤務時間に応じて加入 ・ 車、バイク通勤(可、駐車場無料) ・制服なし
勤務地 町田市野津田町168-1(町田かたつむりの家) 町田市根岸2-31-5(サポートセンター町田とも) 町田市小野路町1605-2(町田生活実習所)
アクセス 事業所により
勤務時間 8:30~10:30、15:30~17:30
休日 土曜・日曜・祝日
応募資格 介護職員初任者研修修了以上、普通自動車免許所持(AT可)
公式ホームページ |
【パート】 社会福祉法人白峰福祉会 移動支援(ガイドヘルパー)、居宅(ホームヘルパー)
時給例 1,200円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【時給給1,200円、土日祝日時給50円アップ】
待遇 ・交通費支給(実費) ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金) ※勤務時間に応じて加入 ・制服なし
事業所 町田市野津田町168-1(町田かたつむりの家)
勤務エリア 町田市・相模原市近隣
勤務時間 例:平日16:00~19:00、 土日祝9:00~15:00 内容により前後します
応募資格 介護職員初任者研修修了以上 |
見学ポイント
採用担当からひと言
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