支援スタッフの阿部さんが隣に腰かけ、ご利用者様の目を見て名前を呼ぶと、口元をほころばせながら彼女を見つめて、差し出された彼女の手にその大きな手を添えます。
すると今度は、その方は自らの頭を彼女の手に差し出すように首をかがめ、彼女のその手が額に触れるや、目を細め、単なる喜びや嬉しさを超えた気持ちをその顔に表していました。
ここは町田市図師町にある「町田福祉園」。障害のある方が暮らす施設サービス(施設入所支援)や、自宅やグループホームなどから日中の活動のために通う通所サービス(生活介護)などを運営しています。正門から木々に囲まれた橋を進むと、正面に2階建ての建物が見えてきます。
敷地内は奥に行けば行くほど広くなっており、いくつもの建物が見えてきます。園の中央にある手入れの行き届いた芝生の庭には、五月晴れのこの日、蝶のように植木の周りをあちらこちらと散歩するご利用者様と支援スタッフさん、屋外でティータイムを楽しむ人たちなどがいて、開放的な光景が広がっていました。
町田福祉園は、18歳以上の知的障害のある方が利用しています。また定員の半数近くは、重複障害(知的と身体の両方に障害を併せ持つ)の方です。また自閉症の診断が下りている方も多くいるのだそう。東京都内の入所施設の中でも町田福祉園は特に、障害の程度がより重度の方が利用している施設になります。
施設内を見学させてもらうと、車いすに乗っているご利用者様もいれば、支援スタッフさんと一緒にやや小走りに歩いているご利用者様もいるように、ご利用者様の運動量や身体機能の状況もさまざまです。
また、自閉症の症状として、聴覚などの感覚過敏やパターン化された行動へのこだわりなどがあるご利用者様一人ひとりが安心して暮らすためには、もちろん一人ひとりに合わせた支援が求められます。
町田福祉園では、ご利用者様は日中、作業室での紙すきや石鹸づくり、陶芸などの創作活動、体育館や屋外プールといった備え付けの設備を利用した運動、地域情報誌を配りに行くといった地域活動まで、支援スタッフさんと共に参加します。
支援スタッフは、入所と通所のそれぞれの部署に所属が分かれています。通所であれば土日をのぞく週5日、入所であれば365日24時間をシフト制で交代しながら、ご利用者様の支援にあたっています。
「人生で初めて出会った障害のある方のコミュニケーション方法に衝撃を覚えました」
支援スタッフの小松さんは保育士を目指していた短大時代、実習のために障害者施設を訪れた時のことをそう語ります。
「それまでの人生のなかで障害のある方に接してきたことがなかったので、障害のある方に対しては、大きな声を出したりするとか、コミュニケーションが難しいというようなイメージしかありませんでした」
学生時代の実習を通して、障害のある方とのやりとりを間近に見ることで、印象ががらりと変わっていったのだそう。
「ご利用者様が言葉を発しなくても、支援スタッフさんと手を握り合ったり、物を指さしたりするだけでコミュニケーションがとれているのを見て、『え、それだけで分かるの?』と驚きました。それが障害者支援に興味を抱いたきっかけです」
この春、町田福祉園で勤めて3年目になった彼女は、知的障害に加えて自閉症の症状があるご利用者様が多く暮らす、生活ユニットで支援にあたっています。
「ご利用者様によって、意思の伝え方は異なります。あるご利用者様が人差し指を顎に当ててトントンとする時には、『次の食事のメニューは何か教えてほしい』や『他のご利用者様はいつ食べるのか教えてほしい』など、4つの異なるリクエストを意味しています。コミュニケーションの仕方は本当にさまざまなのです」
「4つの中から、今回はそのうちのどれがリクエストされているのか、状況から考えて一番可能性の高そうなリクエストから順番に探っていきます」
そのまるでクイズのようなやりとりを面白そうに話す彼女は、
「私が関わったことでご利用者様が笑顔になってくれるのが嬉しい」
とご利用者様と意思が通いあう喜びを話してくれました。
「細部にまでのこだわりに惹かれました」
そう話すのは、支援スタッフの坪内さん。食堂には大きな窓から自然光が差し込み、障害者施設にしては高めの天井は木材がはめ込まれた間接照明になっており、長時間いても目が疲れない、居心地の良さがあります。壁にも木材が多くあしらわれ、おしゃれなカフェのような雰囲気です。
「就職をひかえた施設見学の際に、『町田福祉園は生活の場なので、少しでもぬくもりのある雰囲気にするために、もともとあった白塗りの壁に木材を貼ったのですよ』と教えてもらいました。その時は、『そういうものなのだな』とさして気にもしなかったのですが、別の施設の見学に行ったときに、その施設の中には真っ白な壁の風景が広がっていたのを見て、違いにようやく気付きました。その後、どちらで働きたいか考えたら答えは明白でした」
初めて訪れた場所なのにもかかわらず、なぜだかリラックスできる理由が分からずにいた私は、彼の言葉からようやく合点がいきました。
床や壁などの随所に木のぬくもりが感じられる施設内に、自然と私の身体と心が反応していたのです。それはきっと、長い期間を町田福祉園で暮らすご利用者様にとっては、我が家のように安心できる生活環境であるはず。
このちょっとしたこだわりは、暮らす人の身になって考えてみたからこそ生まれた発想です。たとえ直接的には支援に結びつかずとも、安心できる生活環境を整えることは、ご利用者様を支援する際の考え方とつながっています。間接的な事柄においても、ご利用者様を想う細やかさに、彼は気付いたのでしょう。
「ご利用者様が話す言葉が、言いたいことのすべてではないのです」
ご利用者様とハイタッチを交わす支援スタッフの阿部さんは、エピソードを交えて話してくれました。
「週末にポータブルDVDプレーヤーで映画鑑賞をするご利用者様が、鑑賞中に『クロコセット貸して』と何やら探しに来ました。私はクロコセットが何のことだか分からず、『ごめんね。もう一回教えてもらってもいい?』と聞き返すも、『クロコセット』としか答えないご利用者様。『どこにあるのかな?』と質問を変えて尋ねてみると、『職員室』とヒントが出ました。そこからたくさんやりとりを続けて…、“黒いコンセント貸して”と言いたかったのだとようやく突き止めました」
「おそらくこれは、支援スタッフが“黒いコンセント”と言っているのを聞いていたご利用者様が“クロコセット”と覚えていたのだと思います。けれどもこの方のように、ヒントを出せたり、他の言い方を考えられたりするほど語彙数が多くないご利用者様も少なくなく、そもそも言葉を話せない方もいます。けれども、表現されている言葉だけがご利用者様の持っているすべての言葉なのではなく、内側にはもっと多くの言葉(気持ち)があるのです。表現したいけれどできない、その内なる気持ちを引き出すことができたら嬉しいですね」
「本当の気持ちは話していることと別にあって、話せないでいたり、上手く伝えられないでいるのかもしれません」
まだ見ぬそれを探すように阿部さんは語ります。
本当の気持ちを知るために、支援スタッフさんはご利用者様をよく観察しています。そして、意思という人にとって大事なものを、たとえそれがいかに分かりづらくとも、きちんと理解しようと努めています。そうして頑張る人たちの存在が、ご利用者様たちが町田福祉園で暮らす安心の核にもなっているのでしょう。
『町田福祉園の良さは、職員の「やってみたい」という気持ちに、「やってみたらいいよ」というYesで答えてくれることだと思います』
採用担当の奥秋さんは、町田福祉園の良さをそう語ります。
自らチャレンジすること、職員さんのやりたいことを形にする応援ができる土壌がしっかりと根付いているのだそう。
また、奥秋さんは採用担当の業務のみならず、併設されている相談支援センターの相談支援専門員としての業務も兼務していることもあって、現場で経験を積み、ゆくゆくは相談支援に携わりたいと考える応募者や職員さんにも身近な存在に思えます。
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「福祉とは、幸せや豊かさを意味する言葉です」
エネルギッシュで年齢を感じさせない理事長の阿部さんが、職員に向けて掛け声のように話している言葉です。
その言葉を体現するようなエピソードのひとつを、スタッフさんから教えてもらいました。
「あるご利用者様と支援スタッフが、地域のコンビニで買い物をして帰ってくることを日課としていたことがありました。レジの前ではこのやりとりをするというご利用者様のルーティーンがあり、その行動に店員さんも少しずつ慣れてきた頃、いつものようにレジの前でやりとりをしていると、背後から順番待ちをしているお客さんに『遅い!早くしろ』と怒鳴られてしまうことがありました。支援スタッフと店員さんが謝り、怒鳴られて驚いたご利用者様もなだめてその場は収まりました」
「この件に関しての問題は、見る角度によって違ってくるかもしれません」
ぐるりと円を描くように、いくつかの考察が挙げられていきます。
「施設の中では、ご利用者様のペースに合わせて待てる環境がありますが、公共の場でルーティーン化されたそのやりとりをしてしまうことは果たして良かったのか」
「ご利用者様には、いつものように買い物をしていただけで怒られたという悲しい思いをさせてしまった」
「他者から見ると意味の分からないやりとりを見て、障害者に対しての拒否的な反応もあったのかもしれません」
「電子マネーの使い方が分からない人が困っていたり、手先が動かしづらくお金をうまく財布から出せずに焦っている高齢の方など、レジで長くやりとりしている人は他にもいます」
これらの意見は、次のようにまとまりました。
「ご利用者様の『買い物』という課題にトライして、起きたことにどうしたら良いかと考えてみると、それが社会の抱えている課題とつながっていたのです。理事長は常々、『福祉は課題の宝庫だよ』と言っています。私たちは何か大きく社会を変えたいから考えているのではなく、ご利用者様のことを考えていたらそれが自然と社会につながっていたのです。そして、1人が抱えている課題は、実は他の人も同じように抱えている課題であったりします」
「とはいえ、支援スタッフも勤め始めた最初は、社会課題のことなんて想像もしていないはずです。目の前のご利用者様をとにかく一生懸命支援していると、知らず知らずのうちに見えてくるものなのです」
みずき福祉会の理念にある“すべての人が安心して暮らせる社会を実現する”という宣言には、ご利用者様のみならず、その家族や友人、地域住民、そして支援スタッフなど、全ての人々へ向けられた福祉のありようが示されています。
ご利用者様の安心は、回り回って、自らの安心へとつながっていく。そしてそれは、もちろん幸せや豊かさでもあるでしょう。利用者様の安心を支える仕事は、私たちの社会の安心や幸せを実現する仕事であるということです。
働く人の声
ご利用者様が安心できる生活を支援したい
私が関わったことで、ご利用者様が笑顔になってくれると仕事のやりがいを感じます。ご利用者様が安心できる生活を支援するスタッフになりたいです。
支援スタッフ 小松さん
伝えたいことを理解できると嬉しい
ご利用者様の伝えたいことが理解できて、通じ合えたと思えると嬉しいです。ご利用者様一人ひとりを想いながら支援しているのが町田福祉園の良さだと思います。
支援スタッフ 坪内さん
チャレンジを応援してもらえる
ご利用者様に心地いいと感じてもらえる支援スタッフでありたいです。町田福祉園は、いろいろなことへのチャレンジを応援してくれるので、それが心強い後押しになっています。
支援スタッフ 阿部さん
【正社員】 社会福祉法人みずき福祉会 町田福祉園 障がい福祉サービス(生活介護、施設入所支援)
年収例 3,574,800円~(初任者研修修了時の場合) 3,843,600円~(経験3年介護福祉士の場合)
月収例 198,200円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【基本給181,000円~(大卒)※経験による加算あり、 夜勤手当4,300円/回(月平均4回)】
他手当:扶養手当14,500円 (二人目以降6,000円、4,000円)、 時間外手当、役職手当、住宅手当10,000円(賃貸借主、持ち家世帯主の場合支給)
賞与:合計4,4カ月年3回支給※前年度実績、 期末手当(処遇改善手当、特定処遇改善手当分):年400,000円程度支給見込み
216,200円~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【基本給193,000円~(大卒)※経験による加算あり、 夜勤手当4,300円/回(月平均4回)、資格手当6,000円 (介護福祉士)】
他手当:扶養手当14,500円(2人目以降6,000円、4,000円) 時間外手当、役職手当、住宅手当10,000円(賃貸借主、持ち家世帯主の場合支給)
賞与:合計4,4カ月年3回支給※前年度実績 期末手当(処遇改善手当、特定処遇改善手当分):年400,000円程度支給見込み※賞与と別途
待遇 ・交通費支給(実費30,000円/月まで) ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済) ・車、バイク通勤可(敷地内無料駐車場・駐輪場あり) ・昇給あり ・制服なし ・年次有給休暇 初年度14日 ・特別休暇あり※産・育休、介護、結婚、忌引等
勤務地 東京都町田市図師町971-2
アクセス ①JR横浜線、小田急線町田駅よりバス 「忠生四丁目」下車 徒歩5分 ②JR横浜線、京王相模原線橋本駅よりバス 「根岸」下車 徒歩5分
勤務時間 7:15~16:00、8:30~17:15、11:45~20:30、16:00~翌9:00 ※45分休憩8時間勤務(夜勤は1時間休憩) ※配属部署により勤務開始時間が若干異なります
休日 年間休日115日
応募資格 介護職員初任者研修修了以上
公式ホームページ |
見学ポイント
園内で行き交うご利用者様と支援スタッフさんのやりとりに注目してみると、さまざまな方法で意思を通わせていることに気付けるはずです。
採用担当からひと言
他にもこんな施設・事業所があります
鶴川にある様々な障害のある方が暮らし(施設入所)、通う(生活介護)事業所。支援者たちの懸命なその背中が、未来の支援者を育てているのです。
施設入所・生活介護
町田・鶴川・柿生