つながりを持つこと【あおいけあシリーズ第3回】

亀井野珈琲を後にして、あおいけあの運営している小規模多機能型居宅介護おたがいさんにも伺いました。

 

ガラリと扉を開けて入った瞬間から、ご利用者さんの活気のある声が聞こえてきます。

「ほらほら、音が鳴るね」

「何を見てるんだろうね」

ご利用者さんが4人ほど集まっているテーブルの片隅には、3歳くらいの子供も一緒に座っていました。キョトンとした顔でこちらを見ている彼女は、ここで働いている職員さんの子供です。

 

中を見渡すと子供と遊んでいるご利用者さんだけでなく、洗濯物を職員さんと畳んでいる方や、縫い物をしている方、テレビを見てくつろいでいる方など、よくありがちな手持無沙汰な様子の方は見当たりませんでした。

伺った年末は、あおいけあの餅つき大会と合わせて催されるバザーに出品する作品づくりにも追われていました。帽子やバッグ、マフラーなど手編みならではの温かい風合いが感じられます。少しでも良いものを作ろうとご利用者さん同士で競い合うからか、どれも個性豊かな作品になっています。

 

自分が作ったものを人に売るということでお金を得るだけではなく、買ってくれた地域に住む人から「良いものだね」と認められることで、ご利用者さんは「また良いものを作ろう」と、やる気が起こるのだと職員さんは言います。ただの編み物レクリエーションでは終わらせずに、売るという社会とつながるところまで考えているのは、他の事業所でも活かせるのではないかと思いました。


「下町育ちだから、よく昔はやったもんだよ。こういうことはね」

 

しめ縄を作るご利用者さんは、職員さんからも「すごいわ~」と声をかけてもらうと少し照れながらも、やはり嬉しそう。

「いくらくらいで売れるかな」

「1000円かな」

値段も相談しながら、手は動かし続けてアッという間に出来上がっていきます。


メディアでもよく取り上げられるあおいけあとだけあって、特別な介護をしているのではないかと思っていましたが、子供が一緒になってくつろいでいることも、ご利用者さんのそれぞれ得意なことを活かして作品づくりをしているのも、なにもそんなに特別なことではないように感じました。

 

たとえ認知症になっても、手続き記憶と呼ばれる、昔取った杵柄のような記憶は失われにくいと言われています。それをうまく生かせば、社会とのつながりを持ち続けることができる。簡単に見えて、出来ていない施設が多いからこそ、いろいろな世代や地域とのつながりを持っているあおいけあが特別に思えるのかもしれません。

(影山)

 

(あおいけあシリーズ第4回へ続く)

 

★あおいけあシリーズ第1回 食べる楽しみをいつまでも

★あおいけあシリーズ第2回 美味しいコーヒーを届けたい