母の手作りコロッケ

年始に実家へ帰ると、母が手作りコロッケを用意して待っていてくれました。玄関を入ると、香ばしいパン粉の香りが出迎えてくれて、「コロッケだ!!」と、お腹が鳴りました。母の手作りコロッケは、芋好きの妹と先を争って食べた懐かしい味の1つです。

 

材料はじゃがいもと玉ねぎ、ひき肉。中身はそれだけ。特別なものなんて何ひとつ入っていません。味の秘訣は、じゃがいもを蒸してつぶすときに入れる、コーヒークリープの隠し味だと、母はこっそり教えてくれました。完全にはつぶさず、じゃがいもの形が少し残っているのも我が家流です。これが食感のアクセントになるのです。

 

せっせとタネを丸めて、小麦粉をまぶして卵にくぐらせ、パン粉をまとわせて油の中へ放り込んでいきます。キツネ色になるまで、コロコロと油の中を転がして、出来上がり。


サクッとした衣を箸で割ると、ふわ~と湯気があがります。熱いのは分かっていても我慢できずに口に入れて、ホクホクとしたじゃがいもの食感を確かめます。噛むごとに、玉ねぎやひき肉の甘さが口に広がり、市販の物にはない味があります。

 

料理好きな私でも、なぜだかまだコロッケを作る気になれないのは、母が作ってくれるコロッケが私にとってのご馳走だからかもしれません。自分で作った料理を、家族に食べてもらうようになると、美味しそうに食べてくれる人のために、私も料理を作るようになりました。

 

私が母の作ってくれるコロッケを再現しようとしても、母が私たちの食べる姿を思い浮かべながら作ってくれたコロッケの味にはなり得ないのです。まだ、母の味には及ばないけれど、自分の料理を楽しみにしてくれる人のためのコロッケを、いつか作れるようになるのが目標です。

(影山)