「この家で最後まで暮らしたい」
住み慣れた我が家で自分らしい最期を望む方は、決して珍しくありません。どうしても守りたい暮らしとは、どのような意味を持つものなのでしょうか。
町田市木曽の「KISOコミュニティスペース」内に、看護小規模多機能型居宅介護支援ハーモニーはあります。町田病院と同じ法人が運営し、居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、高齢者支援センターが併設されています。令和2年5月にオープンした新しい事業所です。
看護小規模多機能型居宅介護支援では、在宅で生活している方が通い(デイサービス)、泊り(ショートステイ)、訪問(ホームヘルプ)、看護(訪問看護)と、異なるサービスを同じ事業所で一体的に利用できます。
デイサービスはA事業所、ショートステイの時にはB事業所と別々の事業所を利用することが多くありますが、看護小規模多機能型居宅介護支援(以下、看多機)に登録すると、利用するサービスは異なっても同じ介護士と看護師によるケアを受けることができるようになります。
ご利用者さんにとっては、馴染みの関係を作りやすく、働く介護士や看護師にとっては、在宅と施設の両面からご利用者さんを観察し、ケアすることができます。
看多機のご利用者さんの登録定員は29名。その内、1日に泊まる(ショートステイ)ことができるのは最大9名まで、通い(デイサービス)は泊りと併せて15名までと、利用人数も小規模です。
気管切開をしていたり、常時吸引が必要であったりするなどの医療的ニーズの高い方も利用することができます。もちろん、その際には介護士と看護師が協力しながらケアにあたります。
「病院に入院している時よりも、在宅に戻った時のご利用者さんの方が魅力的に見えるのです」と管理者の川村さんは語ります。
「病院で勤めていた頃に担当していたご利用者さんに、訪問看護の現場でばったりと再会したことがありました。病院では皆さんが同じ入院着を着た“患者さん”でしたが、自宅に戻ったその方は“その家の主”であり、家族もいて、趣味や役割もあり、生き生きとして見えました。それが訪問看護に興味を持ったきっかけです」
最近は病院の入院日数も減少しており、早期での退院、自宅療養へと転換されつつあります。しかし、いざ退院となっても、一人暮らしや高齢の夫婦のみの世帯の場合、療養生活に不安が残ります。そこで、看護師による経過観察や訪問介護、介護者やご本人の負担を軽減するためのショートステイ利用など、さまざまなサービスを組み合わせることで在宅生活が営みやすくなるのです。
またターミナル期の方が、病院や施設ではなく、自宅での最期を希望される場合もあります。ハーモニーを利用し、ご家族によって行われていた介護を専門職が代替することで、ご家族がご利用者さんと穏やかな時間を過ごしてもらう手助けにもなります。
いよいよという最期が近づいてきたときも、必要に応じて看護師なども関わってもらえるという安心感があることで、不安を少しでも和らげることにつながるのです。
「ハーモニーでは、通い(デイサービス)にご利用者さんが来ているとき、常にレクリエーションを用意したりはしません。テレビを見ても良し、新聞を読んでも良し、それぞれの趣味やしたいことをしていただいています」
もちろんご利用者さんが手持ち無沙汰になっているときは、職員さんが話しかけたり、ゲームや手仕事を一緒にしてもらいますが、多くのデイサービスで行われている体操の時間やレクリエーションの時間など、決められたスケジュールはありません。
「ハーモニーは“第二の我が家”をコンセプトにしています。自宅のリビングでリラックスして過ごすとき、ボーっと何を考えるでもなくテレビを見ていたりするように、ご利用者さんにもここを我が家だと思って過ごしてもらいたいと思っています」
この取り組みによって、これまでどのデイサービスを利用しても馴染めず、「こんなところは嫌だ」と怒って自宅に戻ってきてしまっていた方も、ハーモニーを利用してみると、「毎日行きたい」と語り、ケアマネジャーを驚かせているそう。
「看多機で働いたことで、自分の介護スキルが上がり、それが自信につながりました」
そう話すのは介護士の小林さん。デイサービスや有料老人ホームでも働いた彼女は、看多機で働くならではの良さを語ります。
「デイサービスや有料老人ホームよりも介護度の高いご利用者さんや看取り期にある方に関わるなかで、自分自身が成長できたと思います。気管切開をしている方の入浴など、それまで経験のないことも、手取り足取り教えてもらい、出来るようになると達成感がありました」
「ご家族から感謝していただけることも嬉しいです。在宅生活を望まれていても、不安になることが多かったり、大変なこともある中で、ご利用者さんやそのご家族の気持ちを考えることも役割のひとつなのだと思います」
通い(デイサービス)・泊り(ショートステイ)などの施設における仕事と、ご利用者さんのご自宅での訪問(ホームヘルプ)の仕事の両方が知れるのも看多機で働く利点でしょう。
どちらかだけでなく、施設と在宅の両面のサービスにおける介護士の役割や働き方ができることで、ご利用者さんに対する幅広い視野が養われていきます。
とあるご利用者さんの元へ訪問看護で伺うというので、同乗させてもらいました。ポツポツと雨が降る中、ご利用者さんの自宅へ車で向かいます。
「こんにちは~」
看護師の髙谷さんは、はつらつと元気に挨拶しながら、部屋の中へ入っていきます。
奥の部屋で大音量をかけて時代劇を見ていたご利用者さんが、出迎えにきてくれていました。
「あら、背広じゃなかったのね」
取材の許可をいただく電話の際、「じゃあ、背広を着て待ってるよ」と冗談を言ってくれたご利用者さんに、髙谷さんが話しかけます。
室内には大きな額に入った色鮮やかな刺繍の絵が何枚も飾られ、あちこちに天井から床へと垂直に立つ手すりがついています。これらの刺繍や手すりは、すべてご利用者さんが自分で作ったのだと髙谷さんは言います。
この手すりを利用して、ご利用者さんはトイレや車いすからベッドへの移乗など、自力で行い、生活しているそう。ご利用者さんに体調のことなどを尋ねながら、髙谷さんは手際よく血圧測定や検温を進めていきます。
ご利用者さんの口数が少ないのは、不愛想なのではなく不器用なだけなのだと、髙谷さんとご利用者さんの2人の会話からよく伝わってきました。
庭には、昔大工をしていたご利用者さんお手製のプランターがあり、たくさんの苺の苗が植えられています。
「この植物は全部、ご利用者さんが育てています。一緒に収穫したのですが、今年の苺は出来が良かったみたい」
苺や菊を育てるのが今のご利用者さんの趣味のひとつなのだそう。右半身マヒのあるご利用者さんでも作業しやすいように、部屋からベランダまでホースで水を引いておいたり、プランターの高さを車いすに座っていても手入れしやすい高さに合わせたり、ご利用者さんが自ら環境を整えた力作です。
部屋を見回すと、ご利用者さんの枕元に置いてある写真に目が留まりました。若いころに訪れたアフリカでの記念写真や先立たれた奥様の写真です。他にも表彰状、物干し竿にかかる洗濯物や読みかけの本、生活感あふれるこの部屋のすべてが、ご利用者さんのこれまでの人生を物語っているようでした。
「野菜ジュースあるよ」
客人をもてなそうとする気持ちに甘えさせてもらい、ご馳走になりました。
「美味しいですね」
紙パックにストローを差し、ニコニコしながら私がジュースを飲んでいると、ふとご利用者さんと目が合いました。
「このジュースは美味いんだよ」
同じように野菜ジュースを飲むご利用者さんは、代わる代わる私や髙谷さんを見て笑っていました。その光景からふと、昔、祖父が私にお菓子を与えて、食べている姿を見て喜んでいたのを思い出しました。
あっという間に訪問の1時間が終わりを迎えました。
「じゃあ、また来るね」
髙谷さんが手を振ると、
「あぁ」とご利用者さんは小さくうなずき、目を細めながら手を振って見送ってくれました。
「あの笑顔がたまらない。あぁ楽しかった」
部屋を後にした髙谷さんが、ふと独り言のようにこぼしていました。
「あの家で、1人で暮らしていて不便そうだなと感じるかもしれませんね。でも、ご利用者さんは、『不便なことや、何か失敗してしまうことがここで暮らし続けることを諦める理由にはならない』と言い切ります。あの年代で大工として活躍してきた気概もあるから、『人のお世話にはなりたくない』という想いもあるでしょうし、自分のことは自分でしたいのでしょうね。訪問をしていると、そういった人間のたくましさを間近に感じます」
「訪問看護でしていることは、週に1回の体調や服薬の管理、排便のコントロールなど、医師からの指示書で決められたケアです。それが終わったあとのほんの少しの時間に『ちょっと、これ手伝って』とご利用者さんのあのぶっきらぼうだけど優しい笑顔につられて、日曜大工のお手伝いをしたりすることもあります。けれど、それこそが生きがい支援だと思うのです」
何十年ものたくさんの思い出がつまった我が家で、趣味の園芸を楽しみ、自分のことは自分で可能な限り行い、生きるこの暮らしが大切なのだと、ご利用者さんのその背中は語っているようでした。
自宅で暮らし続けることが、その方にとっての生きがいにつながっているのなら、簡単に手放せるはずがありません。自宅というその方にとってのホーム地で、自分でかじを取り暮らすご利用者さんは、とてもいきいきとして映りました。
体調を案じてかけた言葉に嬉しさと照れを交えて返してくれたり、大事に育てた苺を収穫したときの達成感あふれる表情、暮らしの中で見せるその人らしい姿に、介護者は魅せられていくのでしょう。
働く人の声
自分の親の介護をお願いできる施設に
ご利用者さんが笑顔で過ごしていて、「ありがとう」と感謝してもらえるのが嬉しいと感じる時ですね。ハーモニーを、自分の親の介護をお願いしたいと思えるような施設にしていきたいと思っているので、そのためにまずは自分自身のスキルをもっと高めていきたいです。
介護職員 小林さん
ご利用者さんとの会話が楽しい
これまでも介護の仕事をしていましたが、看護小規模多機能型居宅介護支援は、自分自身のさらなる勉強になると思い、転職しました。仕事をしていて、ご利用者さんと会話するときが楽しいですね。今後はスキルアップを重ね、後輩を指導する立場にもなっていきたいです。
介護職員 石原さん
コミュニケーションを磨いていきたい
以前は病院で長く看護助手を勤めていました。介護の仕事は、ご利用者さんとコミュニケーションを取ろうと試みて、上手くできたときが楽しいですね。ご利用者さんの話すことに耳を傾け、きちんと聴き、それを他職員にも伝える。そうしたコミュニケーションをこれからも磨いていきたいと思っています。
介護職員 深井さん
【常勤】 医療法人社団創生会 町田病院指定看護小規模多機能型居宅介護支援ハーモニー
年収例 3,096,000円~+残業手当等(初任者研修修了時の場合) 3,456,000円~+残業手当等(介護福祉士の場合)
月収例 258,000円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【基本給230,0000円(※年俸÷12か月の月額換算、交通費等各手当含む)、 夜勤手当7,000円/回(月平均4回)】
288,000円~(介護福祉士の場合) 内訳【基本給260,000円(※年俸÷12か月の月額換算、交通費等各手当含む)、 夜勤手当7,000円/回(月平均4回)】
待遇 ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金) ・車、バイク通勤可(駐車場無料) ・昇給あり(1,000円) ・制服貸与
勤務地 東京都町田市木曽西4丁目12-22 KISOコミュニティベース1階
アクセス 小田急線・JR線町田駅よりバス「木曽」バス停下車、徒歩2分
勤務時間 7:00~16:00、8:30~17:30、12:00~21:00、17:00~翌9:00
休日 年間休日122日
応募資格 介護職員初任者研修修了以上 |
【パート】 医療法人社団創生会 町田病院指定看護小規模多機能型居宅介護ハーモニー
時給例 1,050円~(初任者研修修了時の場合) 上記内訳に含まない他手当:夜勤手当7,000円/回
1,150円~(介護福祉士の場合) 上記内訳に含まない他手当:夜勤手当7,000円/回
待遇 ・交通費実費支給 ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金)※勤務日数、勤務時間により加入 ・車、バイク通勤(可、駐車場無料) ・昇給あり ・制服貸与
勤務地 東京都町田市木曽西4丁目12-22 KISOコミュニティベース1階
アクセス 小田急線・JR線町田駅よりバス「木曽」バス停下車、徒歩2分
勤務時間 7:00~16:00、8:30~17:30、12:00~21:00、17:00~9:00 上記が基本となります。短時間勤務等はご相談ください。
休日 シフト制
応募資格 介護職員初任者研修修了以上 |
見学ポイント
採用担当からひと言
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