社会とつながる喜びの輪の中で【大賀藕絲館(おおがぐうしかん)】

「いらっしゃいませ」

 

自動ドアが開くと、目の覚めるようなはつらつとした声とおっとりとした優しい挨拶が私を出迎えてくれました。ここは、蓮の実ケーキや紅花のブーケ、ちりめん細工、手すき紙などの手作り製品を制作、販売している大賀藕絲館(おおがぐうしかん)です。

 

できることを仕事にして、みんなでひとつの物を作り、それを売る。障害のある方にとって、働くことを通し、誰かを喜ばせ、認められ、達成感を抱くなどといったさまざまな体験を積むことのできる場所です。

自然を活かした製品をつくる

立派なつくりのこの建物が、社会福祉法人まちだ育成会の運営する大賀藕絲館(おおがぐうしかん)です。町田市にお住まいの方であれば、リサイクルセンターの隣というと分かりやすいでしょうか。

 

福祉施設というよりは、博物館や資料館に見える建物には、手づくりの製品を扱う販売所が併設されています。大賀藕絲館(おおがぐうしかん)の他にもダリア園を管理する「かがやき」など、複数の障害福祉事業所がまちだ育成会によって町田市内で運営されています。

 

大賀藕絲館(おおがぐうしかん)は昭和50年代に当時の町田市長の大下氏によって、障害のある方の働く場所として開設されました。大賀ハスの茎にある、蜘蛛の糸に似た細い糸を使った織物(藕絲織:ぐうしおり)や紅花を使った染め物作業は、当時から今も続いている光景です。

 

「町田市は福祉が充実している」というよく耳にする巷のうわさは、この頃の町田市の取り組みの印象からきているのだそう。


オープン当時からのコンセプトを残し、大賀藕絲館(おおがぐうしかん)では今も蓮田の管理や紅花、綿花の栽培など草木にまつわる仕事、そしてそれらを加工してハスの繊維や紅花入りのすき紙、蓮の花托のコースターなどの製品制作といった自然を活かした活動を中心としています。


人間味あふれるご利用者さんと働く楽しさ

大賀藕絲館(おおがぐうしかん)では、「就労継続支援B型」と「生活介護」の2つの障害福祉サービスを行っています。どちらも日中、自宅やグループホームから徒歩や送迎車でご利用者さんが通所してきます。

 

ご利用者さんは主に知的障害があり、身体障害を重複する方も一部利用しています。ご利用者さんの障害の種類や年齢層は幅広く、ダウン症や自閉症、発達障害などさまざまな障害にわたり、年齢層は特別支援学校の高等部を卒業したばかりの18歳から最高齢は72歳の方までが利用しています。

 

オレンジの紅花のブーケを手に、冒頭の写真に映っていた施設長の清水さんは、大賀藕絲館(おおがぐうしかん)の魅力を「人間味あふれるご利用者さんと働く楽しさ」と語ります。

 

ご利用者さんに多く見られる、特定の物事や行動へのこだわり、同じ行動パターンを毎回繰り返すルーティーンもその人間味のひとつだそう。ときに集団の輪から脱落し、我が儘にも捉えられかねないそれらの行動も、よく理解すると、その方が何か理由があって大事にしていることであったりします。

 

自分の想いを素直に、あるがままに見せてくれるその様は、人としてとても魅力的に見えてきます。そのような瞬間が、働く上で、ご利用者さんと支援スタッフ互いの憩いのでもあるのだと思います。

 


できなかった作業も、支援スタッフの工夫でできるようになる

「全員が何らかの作業に関われるようにしたいと思っています。すべての作業を1人では完結できなくても、どこか1つの工程ができるのならそこを担当して、できない工程は他の人にしてもらえばいいのです」

 

そう語るのは大賀藕絲館(おおがぐうしかん)で勤めて3年目になる支援スタッフの青沼さん。

 

この日は、T字型の台紙を折り曲げ、コンビニなどでよく見かける煙草の販促材料を2人のご利用者さんと作るという受注作業を担当していました。

 

1人目のご利用者さんが指定の箇所を山折りにした台紙を、青沼さんが四角く整え、2人目のご利用者さんに手渡すと、同じく組み立てられた台座にスポッとはめ込み、出来上がるという流れです。こういった仕事は近隣の工場などに支援スタッフが出向き、ご利用者さんにできそうな作業を選び、いただいてきている受注作業です。

 

作業の進め方もご利用者さんによってさまざまです。黙々と自分のペースで取り組むご利用者さんもいれば、「モンチッチ」とご利用者さんが言うと、「ムック」と青沼さんが返事をするというように、支援スタッフとのルーティーン化したやりとりを楽しみながら作業を進めていく方もいます。

 

この日はたまたまお休みのご利用者さんがいた工程を、青沼さんが替わりになり、1人目と2人目のご利用者さんと一緒になって受注作業を進めつつ、手が止まっている場面では声をかけ、作業を進めていました。

 

「できなかった作業も、支援スタッフの工夫次第でできるようになることがあります。以前、山折りと谷折りが混ざり合う作業の時に、どちらに折り曲げれば良いのか分からずご利用者さんが混乱してしまうことがありました。そのときは、自分の手前から奥に向けて折ることに作業は統一して、谷折りの時は山折りした紙を裏返すとできるようになることが分かり、無事に作業を進めてもらうことができました」

 

まさに発想の転換です。ご利用者さんのできることとできないことを観察して見極め、できない原因を考え、作業の方法や環境を提供し、できることに変える。

 

この発想は、できることはしてもらい、できないところを支援するという自立支援の考え方とも同じです。適切な作業工程やスムーズに作業できる環境を自分で考えることが難しいという部分を、スタッフがご利用者さんの代わりに考えて支援するのです。

 

「毎日新しい発見があるのが楽しいです」と青沼さんは言います。カメラに向けて、満面の笑みでポーズを決めるチャーミングなご利用者さんを見ながら、彼もまた笑っていました。


虫の目と鳥の目の両方を使い分けて支援する

かぎ針編みに熱心に取り組んでいるご利用者さんを見守る支援スタッフの表さんも、勤めて3年目になる支援スタッフです。

 

表さんには自閉症をもつ弟さまがおり、幼いころから弟さまと暮らす中で「もう十分支援の仕事はした」と感じ、初めは福祉職に就く予定はなかったそう。

 

しかし、知的障害者ガイドヘルパーの研修を受講したことを機に、講師からの勧めもあり一転、弟さまと同じように知的障害のある方を支援するスタッフとして勤めることになりました。

 

「障害者施設で働くと、ご利用者さんの目線、ご家族の目線、そして社会からの目線、それぞれ少しずつ違う目線を感じます。そのなかでご利用者さんを支援するスタッフは、目の前をこと細かに見る虫の目、全体を俯瞰して見る鳥の目の両方をもつことが大切だと思います」

 

どちらかの目線にだけ立ってしまうと、他方の目線から見るとおかしな支援になってしまうかもしれません。それはいずれにも偏らない立ち位置とも言えるでしょう。

 

カメラのレンズのように、時にズームでご利用者さんの一挙手一投足を見守り、観察しつつ、また時には望遠で同じ場所にいる他のご利用者さんがどのような反応を示しているのか、その支援の長期的な目的や目標をも見据えることの、両方の視点を使い分けられると、多角的な支援につながるはずです。


きちんと褒めるために、小さな素晴らしいことに気付けるようになる

「ご利用者さんを上辺だけで褒めないようにしています。きちんと褒めるためには、小さな素晴らしいことに気付けるようになるのが大事です」

 

読み聞かせをするときのようにゆっくりと優しい口調で、支援スタッフの堀内さんは話します。

 

「上辺だけで褒めても、ご利用者さんは気付きますし、それではあまり嬉しくないでしょう。『今日も楽しかった』、『今日もよく出来たな』と、ご利用者さんが大賀藕絲館(おおがぐうしかん)で過ごした一日を振り返って満足できるように支援したいのです。そう思って長年働いていると、肩の力がだんだん抜けて、ご利用者さんのように喜怒哀楽を表現できるようになって、ほんの小さなことでも喜べる自分に変わっていました」

 

勤続20年以上という堀内さんの言葉には説得力があり、私の腑に落ちました。きちんと褒めるためには、その人の良いところを見つけるためによく見ることが求められます。褒めることを意識していると、見過ごして気付かずにいた小さな素晴らしいことも自然とたくさん目に入るようになり、目の前に広がる景色までもが変わってゆくのです。

 

当たり前だと思っていたことも、当たり前ではないと気づけたとき、世界はより彩り深く見えるようになり、そうした善き働きはともに過ごす人にも伝播していくはずです。


「今の目標は、ハスの実ケーキやシフォンケーキ、自家製ジャムをもっと多くの方に知ってもらい、販売していくことです」


堀内さんは目力を強くして話します。ハスの実は大賀藕絲館(おおがぐうしかん)で栽培している蓮から採れたものを使い、シフォンケーキは町田市近隣の材料を使っています。


お土産にいただいたケーキはどちらも美味しく、優しい甘さと柔らかさが、作っているご利用者さんと支援スタッフさんの印象そのままでした。幼い子どもから高齢の方まで、好まれて買われてゆくのもうなずけます。このケーキが、町田の名産品として広く知られる日が来るのが楽しみです。


喜んでもらえることを続ける

師走も近づくと、来年の干支の牛をモチーフにしたお正月飾りの制作が、そろそろ佳境に差し掛かろうとしています。


こちらの水引飾りは、稲に至るまですべて大賀藕絲館(おおがぐうしかん)で製作されています。しめ縄や干支の牛の飾りなど数十にも及ぶパーツからできる手の込んだ製品です。

 

布を丸く切る、紐を同じ長さにそろえて切る、セロテープに張り付けるなど、細分化されたこれらの数十にも及ぶ工程のうち、ご利用者さんはそれぞれできる工程に責任を持って担当しています。


一つひとつの作業はとても地道なものばかりで、見学していて、とても私にはできそうにないと尊敬の念を抱きました。どの作業も手を抜こうとせずに、じっと手先に集中して働いているご利用者さんの姿は、まるで職人を彷彿とさせます。

 

例年400個制作される水引飾りは、年末に向けてタイムリミットも迫る中、ご利用者さんと支援スタッフが力を合わせて仕上げていく大仕事です。一人ひとりのご利用者さんの日々の働きがつなぎ合わさって、ようやく豪華な水引飾りに仕上がるのです。


働く過程で得られる喜びをさらに増やしていく

「ご利用者さんの工賃を下げないように努力しています」と施設長の清水さんは話します。

 

大賀藕絲館(おおがぐうしかん)で販売されているさまざまな製品の利益は、工賃という形でご利用者さんが毎月手にするお給料に反映されています。

 

もちろんたくさん商品が売れるようになるのは望ましいですが、だからといって支援スタッフだけで効率よく作業を進めたり、無理なスケジュールで商品を量産して、ご利用者さんが楽しく作業できなくなっては本末転倒です。

 

それぞれにできることもやりたいことも違うご利用者さんが、役割を見つけ、楽しく働いてもらうのが大事だと清水さんは続けます。

 

工賃支給日には「今日は工賃をもらったから、コーヒーを買うんだ」と、ご利用者さんが渡された茶封筒を手に、ワクワク顔で話す声も聞かれます。そしてその封筒には、工賃だけでなく、その過程で得た支援スタッフさんや仲間との楽しかったり、嬉しかったりした感情や思い出がたくさん詰まっているはずです。

 

ご利用者さんが作業と向き合う中で、できることを増やしたり、褒められて嬉しくなったりする経験を積みながら、製品を生み出し、それを買っていただき、手にした人を喜ばせることで社会とつながっていく。

 

工賃を減らさないというのは、働く過程で得られるそうした喜びの循環をさらに増やしていきたいという掛け声に聞こえます。支援スタッフは、人間味あふれるご利用者さんたちと共に、社会とつながる喜びの輪をつくっていく仲間の一員なのです。


働く人の声

スタッフ同士で感謝を伝えることで楽しい職場になる

働く上で、やってもらって当たり前ではなく、きちんとスタッフ同士で感謝を伝えるように意識しています。そうすることで、自分にも鏡のように戻ってくるようになり、楽しい職場環境がつくれていると思います。

支援スタッフ 表さん

 

ご利用者さんの良いところをより多く見つけていきたい

皆さんと一緒にひとつの仕事をやり遂げた時や、ご利用者さんの新しい可能性が見つかったとき嬉しくなります。職員同士のチークワークが大事な仕事なので、連携をうまく図りながら、ご利用者さんの良いところをより多く見つけていきたいです。

支援スタッフ 青沼さん

 

ハスの実ケーキやシフォンケーキを皆が知る人気商品にしたい

ご利用者さんを褒めたときに喜んでもらえると、私も嬉しくなります。そうして働くうちに、以前と比べて、自分の気持ちや感情を人に伝えられるようになりました。今後は、ハスの実工房で製作しているハスの実ケーキやシフォンケーキを、町田のみならず多くの方に知ってもらえる人気商品にしていきたいです。

支援スタッフ 堀内さん

 


施設・事業所紹介動画

採用情報

【正規職員】

社会福祉法人まちだ育成会 

町田市大賀藕絲館(おおがぐうしかん)

障がい福祉サービス(生活介護・就労継続支援B型)

 

年収例

3,199,680円~(初任者研修修了時の場合)

3,600,000円~(経験3年介護福祉士の場合)

 

月収例

201,480円~(初任者研修修了時の場合)

内訳【基本給190,480円~、処遇改善手当6,000円、

資格手当5,000円】

他手当:住宅5,000円

賞与:合計4カ月年2回支給

 

226,500円~(経験3年介護福祉士の場合)

内訳【基本給215,500円~、処遇改善手当6,000円、

資格手当5,000円】

他手当:住宅5,000円

賞与:合計4カ月年2回支給

 

待遇

・交通費支給(実費  50,000円/月まで)

・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済)法定通り加入

・車、バイク通勤可(駐車場は個人契約、駐車場手当あり)

・昇給あり

・制服なし

 

勤務地

東京都町田市下小山田町3267

 

アクセス

JR線・小田急線 町田駅よりバス、「桜美林学園」下車徒歩7分

 

勤務時間

8:30~17:30

 

休日

土曜、日曜、祝日定休※ただし行事や当番により出勤あり、

年間休日125日

 

応募資格

介護職員初任者研修修了以上

 

公式ホームページ

https://machida-ikuseikai.net/service/ohgagushikan.html

【有期契約職員】

社会福祉法人まちだ育成会 

町田市大賀藕絲館(おおがぐうしかん)

障がい福祉サービス(生活介護・就労継続支援B型)

 

時給例

1,109円~(初任者研修修了時の場合)

内訳【時給1,040円、処遇改善手当6,000円/月※、

資格手当5,000円/月※週の就業時間により変動あり】

 

1,129円~(経験3年介護福祉士の場合)

内訳【時給1,060円、処遇改善手当6,000円/月※、

資格手当5,000円/月※週の就業時間により変動あり】

 

待遇

・交通費支給(実費50,000円/月まで)

・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済)

※雇用契約内容により法定に沿って加入

・車、バイク通勤可(駐車場は個人契約、駐車場手当あり)

・昇給あり

・制服なし

 

勤務地

東京都町田市下小山田町3267

 

アクセス

JR線・小田急線 町田駅よりバス、「桜美林学園」下車徒歩7分

 

勤務時間

8:30~17:30の間で6時間半~、週に3日の勤務からご相談ください

 

休日

土日祝、年末年始 ※シフトによる

 

応募資格

介護職員初任者研修修了以上


見学ポイント

就職相談担当 影山
就職相談担当 影山
室内、屋外での賑やかな作業風景を見学した後は、ぜひ売店へ。ご利用者さんが制作したさまざまな製品が販売されていますよ。運が良ければ、美味しいシフォンケーキも手に入るかも。

採用担当からひと言

かがやき採用担当 清水
かがやき採用担当 清水
冬になると豆から手作りしたぜんざいが食べたくなります。ご連絡お待ちしています!

実際に見学してみたい、または相談・応募を希望される方は、下記の電話番号・お問い合わせフォームよりお願いします。


他にもこんな施設・事業所があります

安心して暮らせる社会を

ご利用者様の安心は、回り回って、自らの幸せや豊かさにもつながっていきます。安心を支える仕事は、私たちの社会の幸せを実現する仕事でもあるのです。

障害者支援施設(入所・通所)

町田

飛び跳ねる未来の支援者たち

鶴川にある様々な障害のある方が暮らし(施設入所)、通う(生活介護)事業所。支援者たちの懸命なその背中が、未来の支援者を育てているのです。

施設入所・生活介護

町田・鶴川・柿生