「認知症になると、全ての人がひとつの人物像に向かって、同じようになっていくと思っていました。けれども、1人ひとり違っていたのです。ご利用者さんは皆さんこれまで生きてきた中での経験を全て背負って、歳を重ねていらっしゃいます。私も、こういう風に歳をとっていくのだなと、見せてもらっています」
認知症の方に対する、介護の仕事をする前と働いた後の印象の違いをそう語る卒業生の長尾さん。
認知症という病気もその方の人生における経験のひとつであって、どのように老いていくのかは、これまでの生き方の延長線上にしかないのです。介護老人保健施設(以下、老健)での生活も同じく、その方の人生のひと時にすぎません。
当時、まだ介護の資格を持っていなかった長尾さんは、直接ご利用者さんの介助をする仕事ではなく、まずはベッドメイキングや洗濯など、生活支援の仕事をさせてもらおうと思い、3つの施設の面接に向かったそう。
「大上さんに面接をしてもらった時に、“この人の元で働きたい”と思いました。聞きたいことは何でも聞いてくださいね、という開かれた雰囲気がありました」その時のことをありありと思い出しながら、話してくれました。
別のタイミングで大上さんにこのことを伝えると、「そんな風に言ってもらえるなんて、本当に光栄です」と感謝を口にしていました。面接に来てくれた人に、そのように思ってもらえるのには何か秘訣でもあるのか、と詳しく聞いてみると、
「生活支援というと、ベッドのシーツ交換や掃除などの業務をお願いしがちなのですが、それだけではなく、ご利用者さんとの関わりを持ちながら仕事をしていきませんか?と提案しました。何も考えずにベッドのシーツを張り替えるのと、ご利用者さんと関わりながら、そこで眠る人のことを考えてシーツを張るのとでは、気づきが違います。そこで気づいたことを、他の職員さんに伝えてもらうことも大事だと思っています。それに、ご利用者さんから見たら、生活支援の職員さんも介護職員さんも同じです」
単純な作業にしてしまいがちな生活支援も、捉え方次第では介護のひとつです。あえて仕事を固定しすぎず、関わりを持つ中で、介護職員という選択肢も見据えてもらえたらと大上さんは考えたそうです。
結果として、長尾さんは介護の仕事に興味をもち、湘南ケアカレッジで初任者研修を受け、今は介護職員として働いています。
きっかけなくして老健に入所する人はいません。
入所する目的の多くは、骨折などのケガや脳梗塞などの脳の病気により、思うように動かない身体機能の回復です。病院からいきなり自宅に退院しても、ケガや病気をする前と同じような日常生活を送ることには困難があります。
そのため、その困難をリハビリによって取り除き、自宅で生活を送れるようにするのが老健の役割です。病院と自宅との中間にある場所という意味を持ち、中間施設とも呼ばれています。
自宅での生活をご本人やご家族が望まない場合、専門的な技術や知識を持つ介護職員が関わる特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、次の住まいへの入所の順番を待つ人も利用しています。
ご利用者さんとご家族の両者が自宅に帰ることを望んだ場合、自宅で生活するためのリハビリを老健で行います。高齢者にとって、病気やケガで入院している間に落ちた体力を取り戻すことは容易ではなく、時間がかかります。
そこでまずは、自宅に相談員が伺い、ご利用者さんの生活する空間を調査します。障壁となってしまう環境を洗い出し、杖や歩行器などその方や自宅に合った福祉機器も駆使して、どうしたらご利用者さんが快適に暮らせるようになるかを考えます。
そして出てきた課題点をクリアーするために、必要なリハビリを老健で行います。
たとえば、ご利用者さんが1人でトイレを使用できるようになることが課題だとすると、居室からトイレまでの歩行、トイレでのズボンの上げ下げ、トイレの便座への座りと立ち上がりなど、さまざまな動作ができるようになる必要があります。
歩行が不安定であれば、その方の状況に合わせた福祉機器を使って、自宅の環境を想定しながら歩くリハビリをします。トイレの便座からの立ち上がりも、自宅の便座の高さを測り、高さを同じにした椅子を便座に見立て、座ったり立ったりを練習します。
理学療法士や作業療法士が行う20分のリハビリの時間だけではもちろん足りないため、介護職員が中心となって、生活の中でも取り入れられるリハビリをフロアーで行います。
すべての職種が持ちうる専門性を発揮し、ご利用者さんや家族が前向きに取り組んでくれることで、ようやく家に帰るという目的が達成されるのです。
頻繁に話題になる“仕事のやりがい”について、採用や職員教育を担当する松本さんと大上さんはよく考えると言います。
「介護職員は、ご利用者さんの日常に距離が近い分、ケアをすることが当たり前だと思ってしまっています。当り前なことを当たり前にしているって、本当はすごいことだと僕たちは思っているのです。ご利用者さんが入所されて、個別支援プランを立て、リハビリを行い、希望通り在宅復帰ができたのは、リハビリの専門職だけが頑張ったわけではなく、介護職も自宅に戻れるようにケアをしてくれたおかげです」
他の介護施設に比べて、リハビリや看護の専門職の人数が多い老健ならではの視点には、なるほどとうなずけます。特別なことをしているように見えないために、介護職員はどこにやりがいを見出したらいいのか見つけられず、立ち止まってしまうことがあるのです。
「今は、会議の場などで退所されたご利用者さんのその後を積極的に伝えています。デイサービスに週3日通えるようになりましたとか、家族と旅行に行けるようになりましたとか。せっかく老健にいるのだから、介護職員にも在宅復帰という喜びを味わってみてもらいたいんです」
退所したその後の生活を知ると、介護職員は自分たちが行ってきたケアの成果が見えます。ただ漫然と何も考えずに仕事をするのか、同じ仕事でも目的や学びをもって働いて、仕事にやりがいを感じられるかは、働く人の心持ち次第です。
「他の施設がずっと前に始めていることに、僕たちは今取り組み始めています」と、松本さんは言います。
現状を正しく受け止めるのには勇気が必要です。そして、大事なのはそこからどういう行動をとるかです。
「だってうちの施設は従来型だから、個別ケアなんてできないよ」
「ひとり1人その人に合ったケアをすることが個別ケア。それができないわけがない」
ひとつ一つのケアについて、二人は職員さんと対話を繰り返しています。人の意識を変えることほど、難しいものはありません。
「“理想論ばっかり言っている。”今はまだ、そう思う職員もいるかもしれない。けれども、僕たちは、言い続けます」
同じ学年である松本さんと大上さんは、そう力強く話します。
「1、2、3・・・」と、自分の歩幅を保ちながら職員さんと廊下を歩きます。1日1回、フロアーの廊下を歩くのが目標です。時折立ち止まって、徐々に丸まっていく背中をよいしょと伸ばしながら、それでもまたゆっくりと前に進みます。
「今日はもう・・・」と歩みを止めて、車いすに腰をおろすご利用者さん。
「もう疲れてしまいましたか?」と声をかける職員さん。
「今日はもういいわ。腰がね。何歩、歩けたかしら?」
「じゃあまた今度にしましょう。今日は72歩でしたよ」
結果に納得がいかなかったのか、ご利用者さんは渋い顔をしてうなずきました。今日はあまり調子が出なかったようです。
半歩ずつ私から遠ざかっていく足取りはやはりゆっくりで、けれどもたしかに一歩ずつ前進しています。少しずつ、少しずつ、それを毎日続けていくのです。
「実際に家に帰っていく方は、ひと月に2人から3人です。ご利用者さんとご家族みんなが同じ想いで入所されるとは限らないのです」と、松本さんは複雑な思いを抱えた表情で話します。
だからこそ、「家に帰ることになったよ」とご利用者さんが話すとき、職員は満面の笑みで喜ばずにはいれないのです。一緒に困難を乗り超え、願いが叶って、次のステージに送り出す、一種の同志としての感覚があるからかもしれません。
「ご利用者さんは、人生の少し先を見せてくれている」
長尾さんの言葉を聞いて、どんな言葉よりも温かなご利用者さんへの尊敬が感じられました。そんな風に思ってもらえるのなら、歳を取るのも悪くはないなと思えます。
「家に帰れて、本当に良かったねって思います」と、噛みしめるように語る彼女の瞳が綺麗にうるんだのは、きっといつもその想いが強く彼女の胸の中にあるからでしょう。
働く人の声
ご利用者さんが待っていてくれる
初任者研修や実務者研修において、老健について耳にはしていましたが知らないことが多く、これまでのデイサービスからのスキルアップを考え、「介護仕事百景」を見て転職しました。朝、出勤すると、ご利用者さんが「今日は来てくれたんだね。待っていたよ」と声をかけてくれて、そこから仕事が始まるのが嬉しいです。
入所 介護職員 増田さん
初任者研修33期生
人と関わりながら働く仕事に憧れて
福祉の仕事をしている妻の楽しそうな話を耳にし、これまでの1人で進めていく仕事から、人と関わりながら働く仕事に憧れて転職しました。介護の仕事は、1人ひとりのご利用者さんのことを理解しなければできない仕事だと思います。先輩職員のように、ご利用者さんをサポートして、心地よく、健やかに過ごすことを手伝っていきたいです。
通所 介護職員 入江さん
初任者研修110期生
まずは数か月先を見据えて一生懸命に
自分よりも若い職員さんがきびきびと働いている姿を見ると、「私が同い年の頃はこんなにもできたかな」と感心しつつ、励みにもなっています。何年も先というよりは、まずは数か月先を見据えて一生懸命に働いていこうと思っています。今年には介護福祉士実務者研修を受講したいです。
入所 介護職員 長尾さん
初任者研修81期生
【常勤】 医療法人社団せりがや会 介護老人保健施設ハピネスせりがや
サービス形態 ①入所・短期入所(ショートステイ) ②通所リハビリテーション(デイケア)
年収例 ①3,035,100円~ (+残業代)(初任者研修修了時の場合) ②2,615,100円~ (+残業代)(初任者研修修了時の場合)
①3,441,000円~(+残業代)(経験3年介護福祉士の場合) ②3,021,000円~(+残業代)(経験3年介護福祉士の場合)
月収例(初任者研修修了時の場合) ①218,000円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【基本給127,000円~、職務給36,000円、 処遇改善手当10,000 円、特定処遇改善手当8,000円(令和元年度)、 夜勤手当7,000 円/回(月平均 5 回)、 資格手当1,000 円、キャリア手当 1,000円、】 他手当:残業手当 賞与:合計 3.3 カ月年2回支給
②183,000円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【基本給127,000円~、職務給36,000円、 処遇改善手当10,000 円、特定処遇改善手当8,000円(令和元年度)、 資格手当1,000 円、キャリア手当 1,000円、】 他手当:残業手当、運転手当 5,000円 (デイサービスで運転業務を行う方) 賞与:合計 3.3 カ月年2回支給
月収(経験3年介護福祉士の場合) ①251,000円~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【基本給130,000円、職務給39,000円、 処遇改善手20,000円 特定処遇改善手当16,000円(令和元年度)、 夜勤手当7,000円/回(月平均5回)、 資格手当10,000円、キャリア手当1,000円】 他手当:残業手当 賞与(合計 3.3 カ月年2回支給)
②216,000円~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【基本給130,000円、職務給39,000円、 処遇改善手20,000円 特定処遇改善手当16,000円(令和元年度)、 資格手当10,000円、キャリア手当1,000円】 他手当:残業手当、運転手当 5,000円(デイサービスで運転業務を行う方) 賞与(合計 3.3 カ月年2回支給)
待遇 ・交通費支給(全額支給) ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金制度) ・車、バイク通勤(可、駐車場は自身で契約必要) ・昇給あり ・制服貸与 ・アソシエ倶楽部導入 ・入職時健康診断無料 ・インフルエンザ予防接種無料
勤務地 東京都町田市原町田4-27-29
アクセス JR横浜線・小田急線町田駅から徒歩10分
勤務時間 ① 7:30~16:06、9:00 ~17:36、 11:30~20:06、17:00~翌9:30
② 8:30~17:06 38時間/週7.6時間/日
休日 年間休日110日 ( 夏季休暇3日、年末年始4日)
応募資格 介護職員初任者研修修了以上
公式ホームページ |
【パート】 医療法人社団せりがや会 介護老人保健施設ハピネスせりがや 介護老人保健施設・通所リハビリテーション(デイケア)
時給例 1,050円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【時給1,020円~、処遇改善手当10円、 特定処遇改善手当10円、資格手当10円】 他手当:残業手当、運転手当5,000円/月(デイサービスで運転をする方)
1,110円~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【時給1,020円、処遇改善手当30円、 特定処遇改善手当30円、資格手当30円】 他手当:残業手当、運転手当5,000円/月(デイサービスで運転をする方)
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勤務時間 7:30~20:00の中でシフト制または 、週1日、3時間/日からご相談ください
休日 介護老人保健施設( シフト制または、希望休 ) 通所リハビリテーション(日曜日、祝日、年末年始、希望休)
応募資格 介護職員初任者研修修了以上 |
見学ポイント
採用担当からひと言
他にもこんな施設・事業所があります
ご利用者さんの小さな希望とご利用者さん自身がつながり、それが生きる楽しみにもなっていく。訪問介護は、ご利用者さんとご利用者さんの希望をつなげる仕事でもあるのです。
訪問介護
町田