「展示するものは毎月変わります」
陶芸のボランティアさんと、ご利用者さんが作った器やコップが、年輪の見える机の上に飾られています。同じように見える器でも、表面のざらざらとした質感や、釉薬(ゆうやく)の塗り具合による焼き上がりの色合い、くぼみ方や丸みの帯び方など、微妙に違うそれぞれが、相まって、ひとつの作品になっています。機械のラインに乗ってまったく同じものが量産される陶器とは異なり、ひとつとして同じものはないのです。
焼き上げる際に、ある程度は均一な厚みになっていないと窯の温度に耐えかね、割れてしまったりするため、ボランティアの先生の手直しが多少なりとも入っているだろうことは想像できます。それでも、その目をかいくぐった、コップの持ち手の付け方のずれや、ひょうたん型に近くなっている器のくぼみが、その作品の味になっていることは確かです。
ずれていたり、欠けていたりする部分があるからこそ、並べて飾ってあってもひとつ一つに目が止まり、作者の見てきた歴史であるようにも感じられ、惹き付けられる。陶器たちは作者自身を体現し、それぞれに歩んできた山あり谷ありの人生を語っているようです。
フワッとと漂う墨の香りに誘われてデイサービスを見せてもらうと、シャンと背筋を伸ばして筆を持つご利用者さんたちの姿がありました。5人くらいの方々が、お手本を見ながら半紙に向かっています。
この日、先生はたまたまお休みでしたが、生徒さんたちは先生がいなくても問題にならないほどの腕前の方ばかり。取材中、たいていのレクリエーションには進んで参加させていただく私ですが、あまりのレベル高さに、今回ばかりは申し出る勇気が出ませんでした。
認知症などの症状があり、たとえば今日は何日なのか思い出せなくなってしまっていても、こうした昔から親しんできたものの記憶は手や身体に残っているのです。
運動をしている利用者さんの活気のある掛け声や話し声で、リハビリ室は大賑わいです。身体を動かし、機能を回復させたり、維持することも大事ですが、身体の内側を動かすことも必要です。
足浴で温泉に入っているかのような気分になることで、昔旅行に行ったことを思い出したり、他のご利用者さんと(血行が良くなり温かくなった)手を握り合って、しわの数を競ったり。
無言のまま仏頂面で黙々と身体を動かすよりも、他のご利用者さんや職員さんと言葉を交わしながら、気づいたら身体を動かしていたなんてくらいの方が楽しそうです。身体の内側にある気持ちや心が、リハビリをきっかけに動くことで、より楽しみのある生活になっていくのです。
ヒノキの入浴剤の香りが湯気と共に広がる中、手招きされて私も井戸端会議に混ぜてもらいました。
「湯田中とか草津温泉みたいだよ。こうやって話しながら入ると温まる。」
「あなた、今日はそっちの席?私はこっちだよ」
「足の先からポカポカとね」
「今日もよくしてもらって、いいね。ここ(サンシルバー町田)は」
まるで本物の温泉に浸かりながら話しているかのように、会話が弾みます。
サンシルバー町田を建設するにあたり、現地調査に訪れた東京都の担当者の言葉を、事務長の鈴木さんは今でも忘れられません。
「カーテンなんかつけても、認知症の人にビリビリに破られるし、排泄物で汚されるだけだから必要ない」
1部屋に4人ほどのご利用者さんが生活する空間で、それぞれのご利用者さんのスペースを区切るために付けたカーテンを見た担当者さんが発した言葉でした。
私は思わず開いた口がふさがりませんでした。今からたった数十年前の社会において、認知症の方に対する知識や理解はその程度でしかなかったのです。それを聞いた同社会福祉法人の特別養護老人ホーム(以下、特養)の施設長は「気にしなくていい」と一蹴にしました。
「認知症の人と適切なかかわり方ができていれば、そんなことは起こらないし、老人保健施設(以下、老健)は病院ではない。」
サンシルバー町田のような老健は、治療をする場である「病院」と、自宅や特養など生活をする場である「住宅」との間にある中間施設と呼ばれています。多くの老健は医療法人によって運営されていますので、医療色の濃い施設も多くありますが、サンシルバー町田はなぜか不思議と特養のように見えるところがありました。
なぜだろう。
その場では答えは出ませんでしたが、取材を終えてしばらくして謎は解けました。病院などのような仮住まいではなく、そこに暮らしが見えたからでした。
他のご利用者さんや職員さんとの関りから生まれてくる笑い声や、楽しそうな歌声。趣味の俳句の研究に今も勤しみ、表彰を受ける誇らしげな顔つき。降り始めた雨の音に耳を傾け、大きなソファに座りながら静かに過ごされている上品な姿。
たしかにここ(サンシルバー町田)で生活していることが伝わってきて、老健ではなく特養のようだと私は感じたのでした。
ふと施設の入り口に飾られていた陶器が、サンシルバー町田で暮らすご利用者さんと重なって見えてきました。
それぞれが笑い、歌い、誇らしげな表情をしていたり、凛として立っているようにも映ります。ひとつ1つ異なった形状には記憶や生き方が込められており、見てきた景色や経験してきた数だけの線やくぼみが見えるよう。
ひとつとして同じものはなく、たとえ失われていたり、欠けているように見えても、それゆえに惹きつけられる。そこには幸せというものが確かにあったのです。
施設・事業所名称 | 介護老人保健施設 サンシルバー町田 |
サービス形態 | 介護老人保健施設 |
勤務場所 | 町田市相原町2373-1 |
最寄り駅・アクセス |
JR横浜線「相原駅」及び京王線「めじろ台」からバス7分 |
募集職種 | 介護職員 |
雇用形態 | 常勤 |
仕事内容 | 病状の安定期にあり、入院治療は不要だが、家庭で介護することが困難な方や、退院後リハビリが必要な高齢者を対象として、自立を援助し、在宅生活を送れるよう支援する仕事です。 |
給与 |
常勤 基本給 117,000円 調整手当 24,950円 住宅手当 15,000円 資格手当(介護福祉士 3,000円、3年経過4,000円) ※介護特別手当 25,000円、早出手当 850円/回 ※介護職務手当 16,000円、夜勤手当 6,100円/回 ※昨年度実績、今年度はこれ以上調整している段階 |
勤務時間 |
早番 6:45~15:15 日勤 9:00~17:30 夜勤 16:30~9:30 遅番 11:00~19:30 |
休日 |
常勤は4週9休 ※年間休日108日 |
資格 | 初任者研修修了者以上 |
ボーナス | ボーナス 年2回 (3か月分) |
夜勤 | あり 月平均4回 |
交通費 | 実費 上限30,000円 |
社会保険 |
あり |
車通勤 | マイカー通勤可能 駐車場あり |
昇給 | あり |
選考基準・プロセス | 面接にお越しください |
見学 | OK |
その他 |
他にもこんな施設・事業所があります
代表だけではなく、ほとんどのスタッフが湘南ケアカレッジの卒業生で構成される、居宅・重度訪問介護、障害者(児)のガイドヘルプの事業所。
障害者(児)訪問介護・移動支援
相模原・東林間